動作原理はサイズに関係なく同じですが、小型のロータリーダンパーを使う際には、設計者の経験と力量が重要になることがあります。具体的には、小型ロータリーダンパーと周辺部品との相性を見極める設計力であり、使い方と選定方法にはコツがあります。
ロータリーダンパーの採用検討をしていらっしゃる設計者の声を伺っておりますと、「蓋をゆっくりと閉止させたいけれど、ロータリーダンパーの実装によって製品外観が大きく変わることがないように、出来るだけ小型のロータリーダンパーを探したい」と、思う方が多くいらっしゃいます。そのお気持ちはとても良くわかるのですが、この考え方は少々問題があるかもしれません。それは、小型であるが故のメリットとデメリットがあるからです。
今回は、小型ロータリーダンパーを上手に選んで頂くための情報をお届けします。
目次
小型ロータリーダンパーを選ぶメリット
小型ロータリーダンパーのメリットは、当然ながら「小型であること」で、ロータリーダンパーを実装した製品全体の外観を損ねる可能性が低いことにあります。小さな部品であれば、ヒンジ部が太ったデザインになることも抑えられ、外観もすっきりします。
また、当社の小型ロータリーダンパーに限ったメリットとしては、実装後に目立ちにくい色調であることが挙げられます。色調はグレーと樹脂のナチュラル色の2種類。一般に、ロータリーダンパーは製品内部に埋め込まれ、お客様の製品外観から見えにくいのですが、製品の隙間から見えたとしても、ロータリーダンパーがグレーなので目立ちません。但し、白色系の実機にはグレーが目立つので、ナチュラル色(白系)のものもご用意があります。
更に、周辺部品にもメリットがあります。ロータリーダンパーが小型なので、実装する際の相手部品も小さな形状にすることが出来ますから、部品生産コストも抑えることが出来るでしょう。
小型ロータリーダンパーを選ぶデメリット
小型ロータリーダンパーを選ぶ際にデメリットとなるのは、「強度」です。ご存じの通り、トルクは製品半径と作用力の関係で決まりますから、高トルクが求められる場合には、外径を大きくするか、小径のままで作用力を強くするかのどちらかになります。
小型化を目指しますと、ダンパトルクや相手部品の重量に負けない回り止め形状が求められますが、樹脂製のロータリーダンパーでは高トルク仕様としたときに回り止め形状が割れてしまう可能性があります。ロータリーダンパーのサイズを大きくせずに高トルク化を実現するには、部品を樹脂からダイカストに変更することが考えられますが、例えロータリーダンパーが高トルク仕様に出来たとしても、相手部品の強度不足で割れてしまっては意味がありません。相手部品の強度が確保出来たとしても、ダンパトルクやラジアル負荷を繰り返し受けたことによって形状が崩れることが無いように嵌合部の設計(公差レンジ)を精密にしなければなりません。材料の強度アップも部品精度アップもあなたの製品をコストアップする要素となり、結局のところ、品質とコストのバランスが崩れて量産化に至らないことが多くなります。ですから、必要以上の小型化は回避すべきだと思うのです。
以上のような背景から、当社の小型ロータリーダンパーは、外径φ11mmで最大設定トルクが0.29N・m(3kgf・cm)の樹脂製を取り揃えています。
小型ロータリーダンパーを選定する3つの方法
高トルク仕様を回避して、最大でも0.29N・m(3kgf・cm)以内のトルクで小型ロータリーダンパーを検討するとして、次に検討すべきなのは、蓋の閉まり方に合わせたロータリーダンパーの選定です。特注仕様で製作することも可能ですが、必要な数だけ生産することは単価アップとなりますし、金型製作などの初期投資も必要になるため、コスト面と納期面を考えれば、当社標準製品からの選定がおすすめです。そこで、当社が標準製品として販売している3種類の小型ロータリーダンパーをご紹介します。
小型ロータリーダンパーを水平に閉まる蓋に使用する場合
水平に閉止する蓋には、TD73が最適です。TD73は蓋が水平に閉まる30°くらい手前で高トルクを発揮して、ゆっくりと閉まる特性を持っているロータリーダンパーです。外観がグレーの目立ちにくい色合いをしている為、実装頂いた製品のデザインを邪魔することもありません。トルクバリエーションは、0.05/0.10/0.20/0.29N・mのご用意があり、蓋の重さに合わせて選定することができます。また、一般的なロータリーダンパーでは、固定側と可動側の回り止め形状が異なる場合が多いのですが、TD73は、固定側も可動側も回り止め形状が同じですので、使い方によっては挿入方向の制約が不要となり、簡単かつ迅速に組み付けることができます。年間100万個以上の販売実績を持つベストセラー製品で、幅広い業界の製品にご使用いただいております。
小型ロータリーダンパーを水平に閉まる重い蓋や、斜め閉止の蓋に使用する場合
小型ロータリーダンパーを水平に閉止する蓋に取り付けたいが、TD73では少しトルクが足りず早く蓋が閉まってしまう場合や、斜めに開閉する蓋に取り付けたい場合は、TD148が最適です。TD148はTD73と異なり、蓋の開閉全域で高トルクを発揮する設計であるため、TD73ではトルク不足となる比較的重い蓋に実装しても、蓋の全開位置からダンピング効果を得るので、最後までゆっくりと動かすことが出来ます。
蓋が斜めに開閉する場合では、蓋の全開位置、水平位置、全閉位置、それぞれに求められるダンピングトルクがそれほど大きな差では無いため、全域高トルク設計のTD148がちょうど良い製品になります。トルクは、0.10/0.20/0.29N・mのトルクバリエーションがあり、こちらもトルク違いのロータリーダンパーを組み替えながらちょうど良いトルクを選定頂けます。TD148の外観寸法(相手部品と組み付ける取付に関わる寸法)は、TD73と全く同じですので、挿入方向に制約がなく、簡単かつ迅速に組み付けることが出来るのはもちろん、TD73に組み替えて実装比較することも可能です。
小型ロータリーダンパーを垂直に閉まる蓋に使用する場合
垂直に閉止する蓋には、TD75が最適です。TD75とTD73はサイズが似ていますが、ダンピングトルクと開閉角に差があります。TD75は、重力による負担が最大となる水平位置で高トルクを発揮し、閉まり間際はスッとダンピング力が抜ける動作フィーリングで、蓋をぶら下げた状態から180°回転させた位置まで開くことが可能です。TD73と同様、TD75も外観がグレーの目立ちにくい色合いです。トルクは0.10/0.20/0.29N・mでTD73同様ですが、トルク設計が異なることをお忘れなく。耐久回数は10万回を誇り、寿命は当社製ロータリーダンパーのミドルクラスです。
小型ロータリーダンパーの使用例
小型ロータリーダンパーの使用例をいくつかご紹介いたします。
ゴミ箱
ゴミ箱は、蓋をすることで異臭の拡散を防止していますから、ロータリーダンパーを搭載していない場合には、蓋がうちわのようにゴミ箱内部の異臭を飛散させてしまいます。ロータリーダンパーを搭載すれば、衝撃音の防止はもちろん、異臭の飛散も抑制出来ます。
化粧品ケース
化粧品ケースを開ける際、手を滑らせてしまうと化粧道具がガサっと動き、最悪はケースから飛び出してしまうかもしれません。ロータリーダンパーを搭載することで、化粧品ケースは手を放してもゆっくりと動き、高級感さえ感じる動きにすることが出来ます。
電源カバー
電源カバーは、頻繁に開閉するものではないので、ロータリーダンパーを搭載する必要性を感じないかもしれませんが、点検やブレーカーの上げ下げの際に蓋が勢いよく閉まって指を挟む危険性を回避するとともに、地震があっても蓋のバタつきを抑制することが期待出来ます。
コンソールボックス
自動車のコンソールボックスは、ボタンを押すことで蓋が跳ね上がるときの勢いを心地よい速度に抑制し、自動車内装の動きに高級感を持たせることが出来ます。
小型ロータリーダンパーの上手な使い方と選定方法 まとめ
いかがでしたでしょうか。小型ロータリーダンパーを検討のイメージは出来ましたでしょうか。今回は、小型ロータリーダンパーに関する要点として、以下をお伝えしました。
・小型ロータリーダンパーは、実装する製品デザインに悪影響を与えにくい利点がある。
・小型ロータリーダンパー使用時は、小型なりのトルク設定が最良。
(小型で高トルクは、部品の材質と組立精度要求が高くなり、コストアップ要素になる)
・最適なトルク設定に出来た後は、閉止動作に応じたロータリーダンパー選定が必要。
・コスト面と納期面を重視するならば、当社標準製品からの選定を推奨
・性能面を重視するならば、金型を製作して特注設計することを推奨
以上が上手に選定するためのコツです。設計検討の際は、当社ロータリーダンパサイト内にトルク計算が出来るページのご用意がございますので、是非ご活用頂きまして、ウェブサイトから最適なカタログ製品を探してみてください。検索してもご希望の仕様の製品に辿り着けないときや、特注品のご検討・ご相談がございましたら、こちらのフォームよりご連絡ください。
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恐れ入りますが、しばらくお待ちいただいてもフォームが表示されない場合は、こちらまでお問い合わせください。