一方向ロータリーダンパー|角度制限がない製品の場合

Shutter

一方向ロータリーダンパーとは、一方向のみにダンパ効果を発揮するロータリーダンパーのことを指します。

ロータリーダンパーを使ってモノをゆっくりと安全に動かせるようになっても、シャッターを開けたり、巻き取りコードを引き出したりするような手作業がダンピングトルクによって重くなることは避けたいでしょう。対象物の自重が働く方向や、ばねによる巻き上げで勢いよく動く方向にはダンパ効果を発揮し、その反対方向(手作業を要する方向)はダンパトルクを伝えないようにしたい場合に一方向タイプのロータリーダンパーがオススメです。

一方向ロータリーダンパーの中には、動作角に制限のある有限角タイプにも対象となる製品がありますが、今回は動作角度が無制限の無限角ロータリーダンパーについて、ご紹介します。

Rotary damper TD62

一般に、無限角ロータリーダンパーは、円筒部にフランジがあり、フランジにある取り付け穴でロータリーダンパーを対象物に固定します。円筒部の同心円状にシャフトがあり、シャフト先端にギアやアタッチメントを取り付けることによって相手部品と連動させ、シャフトが回転することによってダンピングトルクを発生させます。無限角ロータリーダンパーの内部は、シャフトと連動するローターと粘性の高いオイルが封入されており、ローターが回転したときに発生するオイルの剪断抵抗がダンピングトルクとなります。

一方向ロータリーダンパーの場合、片方向のみローターを回転させるようにするためにワンウェイクラッチが必要になります。

ワンウェイクラッチは、両方向対応の無限角ロータリーダンパーのシャフト部に後から取り付ける設計とすることで片方向のみダンピングさせることも出来ますが、当社ではワンウェイクラッチも生産しているため、ロータリーダンパー内部の空間を有効活用し、ローターにワンウェイクラッチを内蔵しています。

一方向タイプのロータリーダンパーのメリット・デメリット

Mechanism of rotary dampers

一方向タイプのロータリーダンパーのメリット

・フリー方向の操作性や快適性を損なわない
フリー方向のトルクは小さい為、蓋を開けるときは軽い力で開けることが出来ます。例えば、シャッターに搭載した場合、シャッターを降ろすときはロータリーダンパーが作用してゆっくりと降ろすことが出来、シャッターを持ち上げるときはワンウェイクラッチが空転してロータリーダンパーのダンピングトルクを伝えることなく、シャッターの重さのみ持ち上げることとなり余計な重さを感じることがありません。

・回転方向が切り替わる時の応答性が良い
ワンウェイクラッチはロック応答性が良いので、シャフトの回転方向がダンピングトルクを必要とする方向に切り替わると同時にシャフトがローターと連結してダンピングトルクを発生させることが出来ます。例えば、キーボードの鍵盤蓋にロータリーダンパーを搭載した場合、鍵盤蓋を少し上げた状態で手を滑らせてしまったとしても、すぐにダンピングトルクが発生してゆっくりと静かに閉止させることが出来ます。

・取り付けしやすい
歯車を噛み合わせてロータリーダンパーを実装する際、相手部品との組み付け位相がずれているときには、ロータリーダンパーのシャフトを回転させて位相を揃える必要があります。
両方向タイプのロータリーダンパーの場合、ダンピングトルクよりも強い力でシャフトを回さなければなりませんが、一方向タイプのロータリーダンパーは、ダンピングトルクが発生しない回転方向、つまり、ワンウェイクラッチが空転する方向には、シャフトが手で簡単に回せますので、実装する際に強い力を必要としません。

一方向タイプのロータリーダンパーのデメリット

・両方向にトルクが必要な場合は不適切である
一方向にしかトルクが発生しないため、両方向にダンパ効果を発揮したい場合は、両方向タイプのロータリーダンパーを使用する必要があります。例えば、ぶら下がった重量物のふらつきを抑えたいような用途では、片方向のみ重量物が動きやすくなってしまいます。

・両方向対応の無限角ロータリーダンパーよりも納期がかかる場合がある
ワンウェイ機構による部品点数増加によって部品調達の手間が増えますので、全ての部品が揃わないときには納期が必要になる場合があります。

・有限角と同等のトルクを発揮させようとすると径が大きくなる傾向にある
有限角タイプのロータリーダンパーは、粘性のあるオイルを狭い流路に流す構造であるため、オイルをただ撹拌するだけの無限角タイプのそれよりも高トルクが得られます。無限角タイプのロータリーダンパーを有限角タイプのように高トルク仕様にするには、ローターの外径を大きくしてダンピングトルクを稼ぐことになります。また、ワンウェイクラッチも高トルク仕様が求められますので、ワンウェイクラッチのサイズも大きくする必要が生じます。

主な使用例

Keyboard covers Sliding doors

最後に、一方向タイプのロータリーダンパーの主な使用例をご紹介いたします。

キーボードカバー
キーボードカバーがピアノのような開閉式である場合、ピアノよりも開閉角が大きくなることがあります。開閉角が大きくなると、有限角タイプのロータリーダンパでーは対応出来ませんので、キーボードカバー側面(外観上見えない位置)にセグメント状(扇形)のギアを組み付け、キーボード本体に一方向タイプのロータリーダンパーをセグメントギアと噛み合うように格納することで、応答性良く、且つ、ゆっくりとカバーが閉じ、指はさみを防止することが出来ます。

スライドドア
一方向タイプのロータリーダンパーを採用すれば、ドアを開ける時の力はロータリーダンパーが無い状態と変わらず、ドアを閉じる際はロータリーダンパーによって緩やかに閉止して衝撃音を軽減します。

鉄製の巻き尺
鉄製の巻き尺は収納時に巻き上げ速度が上がらないように手で押さえながら巻き上げないと手を切ってしまう恐れがありましたが、一方向タイプのロータリーダンパーを搭載することによって、引き出す時は軽く、収納する時はゆっくりと収納できるようになります。これはプロジェクタスクリーンなどのようにバネなどの力で巻き上げる機構があるものに効果的な使い方です。

今回ご紹介した一方向タイプのロータリーダンパーはこちらの動画でもご覧いただけます。

一方向ロータリーダンパー|角度制限がない製品の場合 まとめ

今回の内容をまとめると、

・一方向タイプのロータリーダンパーには、ワンウェイクラッチが搭載されている。
・一方向タイプのロータリーダンパーは蓋開閉切り替え時の応答性が良く、直ぐにダンパ効果を発揮できる、
・両方向タイプと比べると、ワンウェイクラッチが内蔵されている分だけ納期がかかる。

ということをお伝えいたしました。

実際の設計検討の際は、トルクの計算が出来るページをご活用いただけます。ウェブサイトではカタログ製品のみ掲載しているので、ご希望の仕様のものが見つからないことも考えられます。特注品のご検討・ご相談がございましたら、こちらのフォームよりご連絡ください。

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