TD100は、外径φ16mm且つ3.0N・mを発揮する小径・高トルクロータリーダンパーです。2007年、ヨーロッパ圏のトイレ業界を中心にデザイン性の高いトイレに搭載するロータリーダンパーの要望が多くあり、外径が小さく高トルクなロータリーダンパーがトレンドになる見通しがあったことから、海外向けトイレ用ロータリーダンパーのTD100開発が始まりました。
今回は、TD100の開発ストーリーとその特長をご紹介します。
目次
小径高トルクロータリーダンパーTD100の開発背景
開発当時、ヨーロッパでは、温水洗浄機能のない普通便座にデザイン性が求められるようになっていました。これは、便器と便座の取り付け部をスリムにしたいというニーズであり、必然的にロータリーダンパーのサイズを小さくすることが求められました。展示会でも同業他社製のロータリーダンパーが小径化していることを散見し、スリムなロータリーダンパーのトレンドは疑いないものでした。ロータリーダンパーを小径にするため、同業他社はシャフトの回転運動をカムによって直線運動に変換し、その直動運動をばねが受けることによってオイルのダンピング力を補完する新しい機構を開発しており、TOKもトイレ業界のお客様のニーズを具現化することは必要不可欠な課題でした。
TD100の開発前は、「TD22」という外径φ16mmの普通便座に必要なトルクを満たすロータリーダンパーがありましたが、全長が非常に長く、亜鉛ダイカスト製である為、普通便座には向かないと考えられていました。また、「TD56」という当時トイレ用途に採用されていたロータリーダンパーもありましたが、こちらも材質が亜鉛ダイカスト製で外径がφ18mmとやや大きい為、便座のデザイン性を保つことが出来ませんでした。新たな製品供給を目論み、TOKとして様々な新方式の模索や、試作検証を実施しましたが、新しい構造のメリットとデメリットを勘案した結果、従来設計の延長線上にある構造で外径φ16mm、最大トルク3.0N・mの全長の短いロータリーダンパーの開発を進めることになりました。
今回の開発にあたり、課題となったのは以下の2点です。
・外径φ16mm、全長50mm程度のサイズで最大トルク3.0N・mを確保する。
・トイレ用の為、トイレ用洗剤に耐えうる材質を使用する。
上記課題解決は、以下のように構築しました。
ロータリーダンパーの課題1 小径高トルク
トルク確保のために、オイル流路を極力狭くする必要があった為、ハウジング内径の羽根部とシャフトの胴体をやや圧入気味にし、初期隙間をなくす設計にしました(上図の赤部分)。ハウジング内部の羽根部を圧入気味にするために金型の駒を特殊な形状にして寸法を確保しました。部品嵌合を軽圧入にすると、トルク値、つまり、閉止時間の初期減衰が発生するため、お客様がロータリーダンパーを使用する際に、仕様通りの閉止秒数になるように、初期性能、耐久、温度特性といった様々な試験を経て妥当性を確認し、出荷時の規格を設定しました。
更に、外径をφ16mmに設定したため、外径φ18mmのロータリーダンパーよりも稼働時の内圧が高くなり、従来のシール部材であるOリングでは耐えられないことが推測されたため、Oリングの材質を従来よりも硬い材質に変更しました。加えて、稼働時の内圧上昇の耐性を上げるため、ロータリーダンパー組み上げに採用している溶着設計にも工夫を凝らしました。
ロータリーダンパーの課題2 トイレ用途に耐えうる材質
トイレの便座、便蓋への搭載を想定している為、洗剤に耐えられる材質が必要でした。結論から言えば、ハウジングとキャップはPBTという耐薬品性がある樹脂を使用し、シャフトは亜鉛ダイカストを選定しました。トイレ用途に実績がある小径高トルクロータリーダンパーTD22は、ハウジングもキャップもダイカスト製ですが、TD100は閉止によるダメージの大きいシャフト部分のみダイカストにし、ハウジングとキャップはPBTにすることで、耐薬品性と軽量化を両立させました。
小径高トルクロータリーダンパー|TD100開発ストーリー まとめ
TD100は、小径高トルク且つ、全長が短く、ハウジングは樹脂製を実現したロータリーダンパーとして上市しました。このロータリーダンパーは、別途開発した簡易着脱システムのSR14と組み合わせることで、便座にソフトクローズ機能を付加させつつ、便器に設けたシャフトと便座を着脱容易に出来るので、便器の拭き掃除を楽に行うことが出来ます。こちらの動画で詳しく説明しておりますので、ぜひご覧ください。
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