小径高トルクロータリーダンパー | TD129開発ストーリー

Toilet with rotary dampers

TD129は、外径φ16mmの既存製品よりも軸方向長さを極力短くして4N・mを発揮する小径・高トルクロータリーダンパーです。

ヨーロッパのサニタリー業界から頂いたニーズにより製品化した、小径・高トルクロータリーダンパー、TD129の開発ストーリーとその特長をご紹介します。

トイレ用途で継続的にご購入頂いているお客様から、蓋が重いトイレを高品質で提供するために、デザインに影響を与えない小径で高トルク、且つ、リーズナブルなロータリーダンパーが欲しいというご要望頂いたことがTD129開発のきっかけでした。この開発によって、小径で高トルクのロータリーダンパーが、当社の新しいラインナップとなるのはもちろんのこと、これまでロータリーダンパーを搭載出来なかったお客様の製品へ適用されることが期待されました。
また、今回ご要望頂いたヨーロッパのお客様は、フランスの工業規格であるNF規格(D12-207/NF240)適合を採用条件としており、この規格に基づく耐久試験は、従来と異なる条件でした。

【TOKの耐久条件】
TOKは、試験条件①と②を別々に実施します。(0°は閉止位置)
①[0°⇒110°⇒70°に戻して解放⇒自然閉止]を5万回
②[0°⇒110°⇒70°から1秒で0°へ]を5秒で連続動作して1.3万回

【NF規格の耐久条件】
NF規格は、自然閉止と強制開閉を織り交ぜた試験で、総開閉回数は30,010回です。
a)[0°⇒85°から解放⇒自然閉止⇒0°]を50回
b)[0°⇒85°から30N負荷(負荷位置は回転中心から205mm)⇒0°]を50回
・上記a)、b)を1セットとして50セットしたものを1サイクルとして、計6サイクル。
・1サイクル実施毎にa)の条件で自然閉止測定した10回の平均が2~15秒で合格
・自然閉止測定は次サイクルに入った最初の10回になるので、6サイクル後の10回測定を加えると総開閉回数は30,010回になります。
([(自然閉止50回+強制閉止50回)×50セット]×6サイクル+最終測定10回)

NF規格に基づく耐久試験は、総開閉回数が弊社の標準的な条件よりも少ない反面、自然閉止の耐久試験と強制耐久試験が複合的に行われるため、動かし方はTOK標準条件よりも厳しくなります。また、NF規格は、85°以内の開閉動作になるため、回転方向を切り替えたときの応答性を良くすること(バックラッシュを小さく設計すること)が設計時に重視されました。

当時の要求仕様をまとめると
・小径(外径φ16mm)
・高トルク(4.0N・m)
・NF規格適合
・コスト
の4点が開発課題でした。

これらの課題に対し、NF規格適合を満たすために、NF規格の条件で稼働出来る耐久試験機を内製しました。残る課題の解決策は共通しており、設計時の形状検討や部品点数削減に難儀しました。次章では当時の課題解決策をご紹介します。

TD129|材質・構造による課題解決策

Rotary damper TD129

外径φ16mm維持しつつトルク4N・mを確保する目標に対し、ハウジングとシャフトの材質に樹脂を選定することは機械物性の点で不適であることが明らかでしたので、量産性が良く、機械物性が比較的高い亜鉛ダイカストを選択しました。出来るだけ大きなトルクが得られるようにハウジング内径を大きく設計しましたが、薄肉すぎてハウジングが割れてしまい、肉厚を上げて最適化しました。このとき、比較的肉厚になってしまう箇所に肉抜きとして外観に直線状の溝を設けたところ、この部分を回り止めとして使いたいという新たなお客様からのお引合を頂き、肉抜きのデザインも改善することとなりました。

TD129|部品数削減と部品設計見直しによる課題解決策

Ring screw and Calking

樹脂よりも高価な亜鉛ダイカストを主材料とした為、部品自体のコスト削減と部品数削減が必要となりました。樹脂部品による組立には溶着、もしくは、タッピンねじで組み上げますが、亜鉛ダイカストでは溶着が出来ないため、リングスクリュー、もしくは、内絞りのかしめが組み上げ手段になります。リングスクリューの場合、ハウジングとキャップにねじを切るので確実に締結が出来ますが、ねじ加工がコストアップ要因となる上に、今回のように高トルクがかかる製品では応力集中によって割れる懸念があります。一方、かしめによる組み上げは、リングスクリューを使わなくて済むので、部品点数が1点削減出来ますが、ロータリーダンパーを使うたびに発生するオイルによる内圧がかしめ部を緩めて耐久性の低下に繋がる懸念があります。それぞれのメリットとデメリットを見極めた結果、可能性のあるかしめ方式を選択しました。開発当初はカシメ部を外径と同じφ16mmとして、耐久で緩まないように肉厚のある状態で試行しましたが、かしめ後は外径にも内径にも広がった形状となり、外径は寸法規格から外れ、内径も十分にすぼまらない状態となりました。この問題は、カシメに関わるハウジング形状を見直すことで解消しましたが、新たな問題として加圧が強すぎるとハウジングが割れてしまい、弱すぎると内側にすぼまらないという問題が生じました。最終的には、リベッティングマシンの条件見直しと、加圧する際のホーン形状変更で最適な内絞りかしめ形状を見出し、当社標準の耐久5万回をクリアすることが出来ました。ちなみに、この技術はその後に上市した弊社のロータリーダンパーSR3にも活用されています。

小径高トルクロータリーダンパー|TD129開発ストーリー まとめ

Relationship between torque and length

外径φ16mmのロータリーダンパーは、当社に数種類ございますが、今回ご紹介したTD129は、TD4やTD22よりも軸方向長さが短く、トルクはTD22同等な、外径φ16mmの中では最も高いトルクが得られるロータリーダンパーとして上市しました。回り止め形状は、お客様が実装する際にも挿入しやすい直線状の凹溝に仕上がっており、現在はトイレや冷凍庫にご利用頂いています。汎用性のある形状と仕様ですので、いろいろな用途に活用頂くことを期待しています。

TOKは、既存製品の供給はもちろん、既存製品を参考にして頂きながら御希望の仕様に仕上げた特注設計を多数行っております。特注設計をご所望の際は、お気軽にご相談ください。

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小径高トルクロータリーダンパーの歴史

[注記]
TD129の開発にあたり、当初ご要望頂いたお客様におかれましては、樹脂製でNF規格に対応した特注のロータリーダンパーを供給することとなり、TD129は現状使用予定がありません。従いまして、TD129は当社標準の耐久試験条件に基づく耐久性を確保して上市しており、2023年10月時点のTD129はNF規格非対応(耐久確認未実施)です。

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