ロータリーダンパーがトルク不足の場合のギアによるトルク増幅方法

水平に閉じる蓋に無限角ダンパーを搭載しようとして、トルクが足りないときに、ギアを組み込むことによってトルクを確保する場合があります。その場合のトルク計算方法は有限角タイプロータリーダンパーと途中までは同じです。

水平に閉じる蓋に、低トルクである無限角タイプロータリーダンパーを搭載するのはどのような状況の時でしょうか？水平に閉じる蓋には、固定するハウジングとシャフトが同軸上にある有限角ダンパーを回転中心に挿入するのが一般的なのですが、軸方向の厚みに制約があり、有限角タイプロータリーダンパーの採用が難しいケースが存在します。その時に、組付けが薄くなる無限角タイプロータリーダンパーを搭載することがあります。電子ピアノの蓋のような、軽く取付場所が小さい蓋には無限角タイプロータリーダンパーが最適です。

しかし、無限角タイプロータリーダンパーは粘性体をかき混ぜるだけの構造の為、一般的な有限角タイプロータリーダンパーを搭載するときよりもトルクは低くなってしまいます。そこで、ギアを組み込み、高いトルクに耐えられる設計にする必要があります。蓋の構造上、セグメントギアを取り付けることが一般的ですが、ロータリーダンパーのトルク計算方法は自重降下の時よりも少し複雑になります。

今回の記事では、セグメントギアに無限角ロータリーダンパーを組み付けてトルクを増幅させるときのトルク計算について、例を示しながら詳しく解説します。

蓋の重量mは、以下のように算出されます。
m＝（230×60×10）/1000×1.42＝195.96[ｇ]＝0.19596[kg]

回転中心から蓋の重心位置までの距離Ｌをおおよそ長さの半分として、
L＝60mm÷2＝30[mm]

蓋のダンピングに必要なトルクT₁は、
T₁＝ m×g×L＝0.19596[kg]×9.8[m/S²]×30[mm]＝57.61[mN･m]

この時、ロータリーダンパーの組み付けスペースにはTOK製無限角タイプロータリーダンパーのTD88が適していますが、TD88は30[min^-1]時の最大トルクが40[mN･m]で、トルクT₁には不足している為、ギア列でトルクを稼ぐことによって対処します。そこで、TD88の標準ギアをベースに、蓋のトルクがダンパートルクの2倍でも使えるように設計します。

TD88のギア仕様：モジュールｍ=0.8、歯数 Z₂＝11枚

トルクを２倍にするには、歯数を２倍にする必要があるので、
歯数Z₁＝22枚

蓋のトルクT₁に対し、TD88に求められるトルクT₂は、以下計算で算出されます。
T₂＝Z₂/Z₁×T₁＝11 /22×57.61≒28.8[mN･m]

つまり、T₂に近い製品は、トルク30[mN･m]の「TD88L1-300」と選定出来ます。

【注意事項】
ダンパートルクの２倍のトルクに対応するようにした為、速比も２：１になります。
TD88L1-300は、回転速度30[min^-1]でトルク30[mN･m]を得ますので、このときの蓋の平均閉止速度は、その半分の15[min^-1]になります。
この速度では遅すぎる場合には、1ランクトルクが低いTD88L1-200の方が適する場合もあります。

今回ご紹介したセグメントギアに無限角タイプロータリーダンパーを組み付けた場合のトルク計算方法は、トルク自動計算ページにて数値を入力するだけで計算できます。ぜひご活用下さい。
TOKロータリーダンパーサイトでは、その他にも様々なタイプのロータリーダンパーのトルク計算方法も公開しておりますので、こちらも合わせてご覧ください。

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