無限角ダンパーは薄型の為、電子ピアノの蓋のような取付スペースが小さい蓋に最適です。しかし、無限角ダンパーは粘性体をかき混ぜるだけのシンプルな構造の為、一般的な有限角ダンパーを搭載するときよりもトルクが低くなってしまうというデメリットがあります。そこで、ギアを組み込むことでトルクを増幅させ、より高いダンパー効果を得る方法をとることがあります。水平閉止の蓋の場合、構造上、セグメントギアを取り付けることが一般的ですが、ロータリーダンパーのトルク計算方法は自重降下の時よりも少し複雑になります。
今回の記事では、セグメントギアに無限角ロータリーダンパーを組み付けてトルクを増幅させるときのトルク計算について、例を示しながら詳しく解説します。
水平に閉じる小箱の蓋に使用するロータリーダンパーのトルク計算例
幅230mm×長さ60mm×厚み10mmのポリアセタール板を蓋にした場合
(POM|ポリアセタールの比重=1.42g/cm3)
今回の計算に使用する小箱の蓋は、取付部が小さく、有限角ダンパーを取り付けられない為、無限角ダンパーを使用します。
TOKの無限角ダンパーの中でも形状が薄いTD88をベースに考えますが、この蓋にTD88を使用出来るかどうか、
計算して確認し、セグメントギアの仕様も考えていきます。
まず、蓋の重量wは、以下のように算出されます。
w=(230×60×10)/1000×1.42=195.96[g]=0.19596[kg]
回転中心から蓋の重心位置までの距離Lをおおよその蓋の長さℓの半分として
L=ℓ/2=60[mm]÷2=30[mm]
蓋のダンピングに必要なトルクT1は、
T1=w×g×L=0.19596[kg]×9.8[m/S2]×30[mm]=57.61[mN・m]
TD88は30[min-1]時の最大トルクが40[mN・m]で、トルクT1には不足している為、ギア列でトルクを稼ぐことによって対処します。
TD88のギア仕様:モジュール m=0.8、歯数 Z2=11枚
トルクを2倍にするには、歯数を2倍にする必要があるので、
歯数Z1=22枚
蓋に歯数22枚のセグメントギアを取り付ければTD88を使用出来ることがわかります。
そして、蓋のトルクT1に対し、TD88に求められるトルクT2は、以下計算で算出されます。
T2=Z2 / Z1×T1=11 / 22×57.61≒28.8[mN・m]
つまり、T2に近い製品は、トルク30[mN・m]の「TD88L1-300」と選定出来ます。
ロータリーダンパーがトルク不足の場合のギアによるトルク増幅方法 まとめ
今回の計算では、ダンパートルクの2倍のトルクに対応するようにした為、速比も2:1になります。
TD88L1-300は回転速度30[min-1]でトルク30[mN・m]を得ますので、このときの蓋の平均閉止速度は、その半分の15[min-1]になります。
この速度では遅すぎる場合には、TD88L1-300よりも低トルクのTD88L1-200の方が最適となる場合もあります。
今回の事例では、TD88を適用出来ましたが、TD88ではトルクが足りない場合は、TD58やTD62等、別の無限角ダンパーを使用することもあります。
ご紹介したセグメントギアに無限角タイプロータリーダンパーを組み付けた場合のトルク計算方法は、トルク自動計算ページにて数値を入力するだけで計算できますので、ぜひご活用下さい。
TOKロータリーダンパーサイトでは、その他にも様々なタイプのロータリーダンパーのトルク計算方法も公開しておりますので、こちらも合わせてご覧ください。
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