蓋がゆっくり閉まるようにする緩衝部品の比較と選び方

ロータリーダンパーと直動ダンパー、どちらを選ぶべき

蓋がゆっくりと閉まるようにするには、ロータリーダンパーやガススプリング、直動ダンパー等の緩衝部品を搭載する必要があります。そして、それらの緩衝部品は、搭載する用途によってメリット・デメリットを考慮して選択します。今回の記事では、ロータリーダンパーと直動ダンパーのメリット・デメリットと、選択するポイントについてご紹介します。

ロータリーダンパー

・メリット
ロータリーダンパーは回転中心に取り付けるだけの非常にシンプルな組付けが基本の為、あまりロータリーダンパーに馴染みのない方でも組付けの設計は容易です。また、基本的にサイズが小さく、埋め込むような実装方法になる為、外観デザインを損なわず、使い勝手がよいところも特徴的です。ただし、蓋が水平に閉まる場合とぶら下がるように閉まる場合では、使用するロータリーダンパーが変わります。どのような蓋の閉まり方でも、蓋が水平位置にあるときに最も高いトルクを発生させるため、水平に閉まる蓋には閉まり際のトルクを最大にし、ぶら下がるように閉まる蓋には水平位置は最大トルク、最後は最小トルクとなるようなトルク特性をロータリーダンパーに持たせることで蓋が滑らかにゆっくりと閉まるようにすることができます。

・デメリット
ロータリーダンパーは蓋の重さを利用して粘性抵抗を発生させる緩衝部品の為、蓋の持ち上げを補助する機能は持っていないので、重い蓋には、持ち上げをサポートするガススプリングをおすすめします。そして、ロータリーダンパーは粘性による剪断抵抗を発生しやすいシリコーンオイルを使用し、粘性体としては温度依存性が低いものの、気温の変化でオイル粘度が変わってしまいます。ロータリーダンパーを屋外で使用する場合には、0℃以下の環境で動きが遅くなり、高温な環境で動きが早くなってしまうことに注意が必要です。

ゆっくりと閉まる蓋に直動ダンパーを搭載するメリット・デメリット

直動ダンパー

・メリット
直動ダンパーは蓋側と筐体側に取り付けてダンピング効果を発揮させます。蓋は、回転位置から遠いところを手で開閉すると軽く動かせるように、直動ダンパーも回転中心から遠い位置に取り付けることで、蓋が閉まるときの軽い負荷を利用してダンピング出来ます。筐体側も蓋の回転中心から遠い位置に固定できると安定したダンピングになりますが、使用時の直動ダンパーが邪魔にならないような配置も考慮すべきでしょう。また、直動ダンパーは負荷を軽く受けることが出来る為、取り付け側の負担が少ない点もメリットの一つです。

・デメリット
直動ダンパーを量産に適用する際のデメリットは、取り付け位置の設計に比較的難儀することと、蓋の取り付け位置の個体差によって、蓋の閉まり方がばらつくことです。取り付け位置を設計する段階では、取り付け位置のバリエーションはいくらでもあるので、理想的な動きを実現させる取り付け位置を見つけるまでに時間がかかるかもしれません。一旦取り付け位置が決まっても、あらかじめ取り付け面にマークや取り付け用の穴を設けるなどの対策をして、量産ばらつきを抑えることが肝要です。

直動ダンパー(回転中心から近い)

直動ダンパー(回転中心から遠い)

また、左図のように筐体への直動ダンパーの取り付け位置が回転中心から近づけば近づくほど、蓋の閉まり際でダンパーのストロークが少なくなりダンパー効果が発揮しにくくなります。そして、右図のように回転中心から遠ざければ、閉まり際までダンパー効果を発揮することが出来る反面、直動ダンパーのロッドを長くしないと必要な蓋の開閉角を維持出来なくなるので、ご希望のゆっくりした閉止動作をつくる取り付け位置を調整するのは難儀するかもしれません。

蓋がゆっくり閉まるようにする緩衝部品の選択ポイント

・蓋の重量とサイズ
蓋の重量とサイズは、緩衝部品選定の重要な要素の一つです。軽量で小さな蓋には、小型でトルクの低いロータリーダンパーが適していますし、重量のある大きな蓋には、より高いトルクを発揮できる直動ダンパーが適しています。蓋の重心位置も考慮し、ダンパーの取り付け位置やトルクを決定する必要があります。

・取付スペースとデザイン
緩衝部品の取り付けは、製品のデザインと機能性に大きく影響します。ロータリーダンパーは、蓋の取り付け部にはめ込むだけのシンプルな組み付けで、製品の外観を損なわないため、デザイン性を重視する場合に適しています。一方、直動ダンパーはロッドが伸縮するため、開閉時の稼働スペースが必要です。例えば、飛行機の荷物入れに直動ダンパーが使われていることがありますが、直動ダンパーは荷物を入れるときに邪魔にならないように、荷物入れの外側に搭載されています。荷物入れの外側に直動ダンパーの稼働スペースを確保することになるので、荷物を入れるスペースは相対的に狭くなります。
一方、重い蓋に直動ダンパーを取り付ける場合においては、直動ダンパーを敢えて見える位置に露出させることで、使用者に製品の頑丈さや安全性を感じて頂けるようにすることもあります。このように、緩衝部品の選定では、デザインと機能性のどちらを重視するか検討することが重要です。

蓋がゆっくり閉まるようにする緩衝部品の比較と選び方 まとめ

ゆっくり閉まる蓋には、ロータリーダンパーや直動ダンパーを取り付けますが、それぞれの特徴と用途に合わせて選択する必要があります。蓋の材質・サイズによって必要なトルクは変わるので、蓋の重量で一概には言えないのですが、TOKが製造するロータリーダンパーは、トルクとして10N・mまでが目安です。ロータリーダンパーのラインナップはこちらからご覧ください。

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